「遺言」が近くに感じられる。
人には遺したいものがある。
皆それぞれの人生を懸命に生きるから。生きているから。。。
そこには思い出があり、未練があり、やはりどうしようもなく生への執着がある。
だから人は、時として自分の人生を振り返り、何かを遺したくなるのだろうか。
遺言とは、悲しくも美しい旋律と、そして強いリズムを持った、
人間の、壮大にしてちっぽけな人生ドラマなのだろう。
いつまでも生きられるなんて思ってはいけない。
そろそろ遺言を書くかな。
「北の国から」の五郎ちゃんの遺言です。
遺言
純、蛍、俺にはおまえらに残してやるものはなんもない。
でも、おまえらには上手く言えんが、残すべきものはもう残した気がする。
金や品物はなんも残せんが、残すべきものは伝えた気がする。
正吉や結ちゃんにはおまえらから伝えてくれ。
俺が死んだ後の麓郷はどんなか。きっとなんにも変わらんのだろうな。
いつもの様に、春、雪が解け、夏、花が咲いて、畑に人が出て
いつもの様に白井の親方が夜遅くまでトラクターを動かし、
いつもの様にでめんさんが働く。
きっと以前と同じなんだろう。
オオハンゴンソウの黄色の向こうに、ゆっこおばさんやすみえちゃんの家があって
もしもおまえらがその周辺に拾ってきた家を建ててくれると嬉しい。
拾ってきた街が本当にできる。
アスファルトの屑を敷き詰めた広場で快や孫たちが遊んでたら嬉しい。
金なんか望むな。幸せだけを見ろ。
ここには何もないが自然だけはある。
自然はお前らを死なない程度には十分毎年食わしてくれる。
自然から頂戴しろ。
そして謙虚に、つつましく生きろ。
それが父さんのおまえらへの遺言だ。