母の32回忌の今日、僕は「はらこ飯」を作る。
はらこ飯は仙台のほうでよく食べた。秋鮭をまぶした味付けご飯にいくら漬けをかけて食べる郷土料理、はらこ飯。
そのはらこ飯を食べることなく、32年前、母は仙台の病院で息を引き取ったのだった。
葬式には秋田からたくさんの友人や親せきが貸し切りバスを仕立ててやってきてくれた。盛大なお葬式だった。
錦秋湖の紅葉がきれいだったと皆、口をそろえて言っていた。
お葬式も道中も雲一つない秋晴れだった。
快晴は、母がそうしたのだとも言っていた。
年金をもらうまであと1年だった。
それを励みに頑張った母はさぞ悔しかっただろう。
僕はこのままいけば、もうすぐ年金をもらう年になる。
その母に逆さ別れで先立たれた祖母も逝き、父も逝った。
逝った人たちが多くなった。
逝った人たちに会いたいね。
はらこ飯を食べながら、今日は思い出話でもしようか。
母なき後に出会った妻と・・・。