文学とはとんかつだ!

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昨日は、朝の4時から夕方の4時半まで、妻とともにノンストップで働いた。

われわれの仕事は肉体労働と違って、かっこよく言えば「頭脳労働」、でも実写すれば「女工哀史的単一的請負型低賃金労働」なので、かなり疲れた。

こういう時、都会はいいもので、ちょっと歩けばとんかつ屋がある。

八幡平ポークというおいしい豚肉を、お店で揚げてまでくれる。

夕食づくりへの勤労意欲がまるで湧かず、こんなに朝から働いたんだから食ってもいいべ!「ええい、ままよ!」とばかりに、少しばかり太っ腹になったボクらは走った。ブタ屋、いや、いざとんかつ屋へ!

とんかつ屋で揚がるのを、腹を空かせて待っている時、お店のテレビで「芥川賞の候補に又吉という、ボクには何のことか分からない芸能人が選ばれた」と盛り上がっていた。

芥川賞かあ~と思った。世はホントに深刻な出版不況なんだなあとも思った。

芥川賞は、かつてのボクにとっては「揚げたてのとんかつ」に匹敵する香ばしい食欲をそそる夢だった。

それさえ取れれば死んでもいいと思っていた。

でもどうだろう。

今の芥川賞は「冷めたゆうべのとんかつ」よろしく、どうもこうも、どうでもいい存在だ。

TVでは、ついでのように、町田なにがし、辻なにがし、綿谷なにがしの写真も出ていたが、ボクにはなんだか「揚げそこないのハムカツ」あるいは「冷めきって半額になったカツサンド」にしか見えなかった。

ごめん、ホントにごめんね。なんかでも、ホントにそうなのよね。

「文学は商売と芸術とが半々であるときに最も栄える」と言った、ウィリアム・ラルフ・イング司祭の言葉が今こそ沁みるではないか。

街角でインタビューに応えた若い女性たち。

「縦書きの文字を読んだことがない」と言った。

「1カ月の読書時間は?」と問われ「0時間」とも言った。

何だか恐ろしい時代だ。

しゃようぞく【斜陽族】

〔太宰治の小説「斜陽」から出た語〕急激な社会変動のために没落の憂き目を見た上流階級。(新明解国語辞典:第7版)

昨日、6月19日は太宰治の命日、つまり入水日であった。

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