たばこを吸い始めたのは中学生の時だった。
それは生まれて初めて犯罪を犯した時でもあった。
でももう罪には問われまい。
月日は煙のように流れた。
その頃の火付け役は、喫茶店でもらった、軸が紙でできたマッチか、百円ライターだった。
5年ほど前にたばこは卒業したのだが、それまでボクはどれだけの百円ライターにお世話になったことだろう。
数千個? 数万個? 分からんな。
一時期、ZIPPOなるオイルライターにハマったこともあったが、それはほんのいっときの浮気心。
すぐまた百円ライターに戻った。
百円ライターは、ボクのたばこ人生、言い換えれば不健康人生を、陰でしっかり支えてくれる存在だった。
常に、たばこあるところに彼はいた。
この間、彼は立派に「ライター業」を勤めて続けていたのだ。
ところがどうだろう。
ここんとこ彼の出番はめっきり減ってしまった。
かろうじて、彼が灯されるのは、朝、サンフォンコーヒーのアルコールランプの芯への着火の時のみだ。
廃れゆくライター業。
ボクらの業界のことではありませんよ。
あしからず。