「こんなことを言うとアレなんですけど・・・」と言う人がいる。
アレって何よ! と思ってしまう。
「ソレってアレでしょ?」という人もいる。
ソレって何よ。アレって何よ。
代名詞や形容動詞、副詞、連体詞の中で、指し示す働きのある語を「コソアド言葉」という。
代名詞は「これ・それ・あれ・どれ」
形容動詞は「こんな・そんな・あんな・どんな」
副詞は「こう・そう・ああ・どう」
連体詞は「この・その・あの・どの」である。
「コ」は近いものを指すので「近称」、「ソ」は中間のものを指すので「中称」、「ア」は遠いものを指すので「遠称」、「ド」はどこにあるか分からないものを指すので「不定称」という。
この理屈から言えば、「こんなことを言うとアレなんですけど・・・」の「アレ」は遠いものを指していることになる。
確かに「こんなことを言うとコレなんですけど・・・」と言う人はあまりいない。
これはちょっと変な用法だ。「ソレ」も同じだ。
「こんなことを言うとソレなんですけど・・・」
「コレ」も「ソレ」も、もうそこにすでにあるべきものだからだ。
やはりここは「アレ」と言わなければならない。
そうでなければ話者の立ち位置が定まらない。
話者は、意識の遠い端のほうにあるものを漠然と指して、雲をつかむような感じや相手を煙に巻くようなニュアンスを出したいのだ。
「こんなことを言うとアレなんですけど・・・」とはそーゆー言葉だ。
まあ、口癖の部類。
ただ、ボクはこのような「コソアド言葉」を多用する人間は嫌いだ。
性格がせっかちだから。
「コレってなんやねん!」「ソレってなんやねん!」「アレってドレやねん!!」と、白黒はっきりつけない物言いに対しては常日頃から警報を鳴らし続けている。
そういうことを言うやつには、いちいちそうやって食い付きたくなる。
そうそう、そういえば、映画『蒲田行進曲』のヤスのセリフにこんなのがあった。
「銀ちゃん、えへへ、コレがコレなもんっすから・・・」
最初の「コレ」はアレで、次の「コレ」がアレなのはお分かりのことだろう。
まあ、これだけは許してやろう。
ヤスがあんまりかわいそうだから。