『氷の微笑』という映画があった。
シャロン・ストーン。
でも氷の微笑などと笑っていられない。
日本中が凍っている。
日本中の顔が凍っている。
東京の人たちは「水抜き」という言葉を知っているだろうか?
水抜き栓が一体どこにあるか分かっているだろうか?
水抜きの仕方を知っているだろうか?
雪と氷問題に詳しいイトウヤスシ氏は、
そんな、いろんなことを心配している。
今朝、蛇口をひねって「え? 何? どうして?」
と、首をひねっている人はたくさんいるだろうな。
顔を洗えないまま会社に行った人も大勢いるだろうな。
駅の洗面台で歯を磨いている人もきっと少なくないだろうな。
そんなことをいろいろ心配しながら、
こっちも人ごとではない、マイナス7度もある深夜に起き、
ボクはトイレに行った。
雪と氷問題評論家のボクとしては、
せっかく温まった体温の放出は極力避けるべきだったが、
世に言う「出物腫物ところ嫌わずの原則」には逆らえなかったのだ。
北側の窓に向かってチョロチョロ。
初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いてもふた取るな。
そんなあまりにもオバカなセリフを心の中で唱えながら、
ボクは放尿を続けた。
人間は極寒状態になると頭が少々壊れるものだ。
寒々しい風の音がした。
吹いてる、吹いてる、おお怖、おお怖。
震えながら窓に目をやる。
目の前に、冒頭に載せた一枚の絵が掛かっていた。