町内会の班長に、この4月からなった。
その初めての仕事は「総会」の案内と資料と委任状などを14世帯に配布することだった。
午後6時過ぎ、晩酌途中、いい加減にほろ酔い状態で2人そろって家を出た。
が、最初のお宅が分からない。
それが、これから始める恐怖のアクシデントの始まりだった。
簡易な町内会の地図によれば、そのお宅は老人ホームの裏にあるはずだ。
隣接しているはずだ。
しかし、ない。。。
その辺はかつて、僕らが引っ越してきた頃は田んぼだった所だ。
かつてはな~んもなかった所だ。
それがどうだろう。
軒並み瀟洒なデザインの家が立ち並び、さながら秋田の田園調布だ。新興住宅街だ。『金曜日の妻たちへ』の金妻タウンだ。『デスパレートな妻たち』のウィステリア通りだ。なんのこっちゃ?
そんなわけで、早くも躓いてしまった僕たちは、ちょうど帰ってきたサラリーマン風の人に聞いてみた。
「すいません、怪しい者ではございません。この春から班長さんになった伊藤です。この辺にNさんのお宅はございませんか?」
「さあ、知りません」
「・・・」
老人ホームに入って行って聞いてみた。
「すいません、うんぬん・・・」
「さあ、知りません」
「・・・」
この後、妻は後ずさりした拍子に、入口の段差でこけてひっくり返りそうになった。
照れ隠しの笑みを浮かべてそこを去った。
それから数十分。
やっとNさんのお宅が見つかった。
ここでも、妻は玄関から出る時に大きく段差に躓き、ひっくり返りそうになった。
その後、僕は道端の段差で大きく足を取られ、かなり本格的にひっくり返ってしまった。
足首をねんざし、脛と手からは血が滲んているようだった。
なんてこった!
そんなわけで、アクシデンタル班長の初日は受難に満ちたものになったのであったのであった。
あ~あ。
でも、この経験から得られたことは多い。
夜、酒飲んでから家々を回るな。