重みのあるものを読もう!
紙の匂いのするものを読もう!
インクの匂いのするものを読もう!
指先にさらさらとめくる感覚のあるものを読もう!
僕はそんな本が好きだ。
本当はそんな本を自分でも書きたい。
しかし、この時勢では、やっぱりKindleになってしまう。
デジタルになってしまう。
厚みのない、重みのない、インクや紙の匂いのしない、指先がさらさらしないものになってしまう。
昨日、また読み聞かせを再開した。
カミュの『ペスト』である。
帯に「熱病の蔓延する封鎖された街で人はどう振る舞うのか?」とある。
怖いが読みたい、読みたいが怖い。
文庫本をしばらく前に買ってはいたが、忙しかったせいもあってなかなか読めないでいた。
が、妻に背中を押された。
結構長い。本編458ページある。
昨日で124ページまで読んだ。約4分の1を読破。
そういうとき、僕がうれしいのは、右手の重みである。
右手は読了した証としての重みをしっかりと伝えてくれる。
文章は品位があって難解なところも多く、読むのはそれなりに大変だった。
目も疲れた。
そんなとき、僕の右手はこう僕に話し掛けてくれる。
「お疲れさま、ほら、僕の重みを感じてごらん。自分の努力を受け入れられるからね」
本はいいなあ。アナログはいいなあ。優しいなあ。