おつむの重さ

昨日バスに乗った。

雨で混んでいた。

若い女がシルバーシートにデンと座った。

その後、よぼよぼのおじいさんが乗り込んできて、若い女のそばに立った。

若い女はスマホゲームに熱中していて(たぶん)気づかないでいる。

女の向いのおばさんが、(一応)おじいさんに声をかけた。

「あのー、すいませんが、譲ってやりたいんですが、私も先日足をけがして、どうしても譲ってやれないんです。ごめんなさいねー」

大きな声で言う。バス中の人がその声を聞く。

その目はおじいさんではなく、ゲームの女に注がれている。

その目は切るように冷たい。声は大きい。

よぼよぼおじいさんは、ただただ恐縮して、「いいえ、いいえ、なもなも・・・」と言っている。

ゲーム女の態度が私は気になる。

たぶん、バス中の人が気になっていたはずだ。

が、がんとしてゲーム女は席を譲ろうとしない。

いや、てこでも動かんぞ!

と言っているような背中である。

困ったのはバス中の人であった。

一番困ったのはヨボヨボじいさんであった。

一番悔しかったのは、当てつけおばさんであったろう。

一番平然としていたのはゲー女だったろう。

そんな光景を私は見た。

途中下りる時に、私はその女がゲームに夢中になっているのを見たわけだが、

ニマニマ笑って片手でスマホを操る姿が、

あまりにものんきで、ちょっと悲しくなった。

向いのおばさんの顔は上気して怒っており、

よぼよぼさんは、やっぱりよぼよぼなのであった。


なんともな・・・

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