「~関係」という言葉がある。
対象をぼやかす言葉だ。
「みたいな~」みたいな言葉。
人々のコミュニケーション能力が落ち、それを補うべく登場した「あいまいもことば」の一つかもしれない。
大体そこらへんの範囲を大くくりに指すから、言われたほうもグサッとこない。けんかにならない。
そんなわけで、「~関係」も大流行りである。
ボクがこの言葉で真っ先に連想する熟語が「肉体関係」である。
対語に「精神関係」があってもよさそうなものだが、それはプラトニックな関係を指す場合よりも、そっち方面の病院関係を指すほうがフツーだろう。
病院関係で思い出したが、先日バス停でこんな会話を聞いた。
「おまえ、ところで今どこで働いてんの?」
「おれか? おれは今あれだ、あっち関係」
「あっちってどっちだ?」
「うん、医療関係」
「へえ~」
会話はそこで終わったが、ボクはその回答者が大学病院の駐車場の案内をしている人であることを知っていた。
まあ、確かに医療関係者と言えなくもない、が、言ってほしくない、とゆーか、やっぱ違うだろ!
同じような関係の問題で、かつて住んでいた村のアキオさんは、生前こんなことを言っていたものだ。
「私の職業は報道関係!」
彼は新聞配達人であった。
確かに報道関係者には違いないが、やはりどこか釈然としないものを感じていたものだ。
では、「~関係」と言った場合、どこからどこまでが「関係内」であって、関係に入れてもらえないのはどこからか?
これは線引きがヒジョーに難しい問題だ。
例えば「法曹関係」と言った場合、「弁護士」や「判事」はもとより、「司法書士」辺りまでは含めて考えていいと思うのだが、裁判所で働く警備員まで含めて「法曹関係」というのはいかがなものか?
同じ音で「放送関係」と言った場合、「テレビ局で働く人」全般を放送関係者と言っていいものだろうか?
そんなわけで、この「~関係」という言葉は大変、大きな含みを持った、懐の広い、それでいて怪しい言葉なのだ。
前述した「肉体関係」もしかりだが、「愛人関係」とか「不倫関係」とか、そーゆー熟語がポンポン出てくることからしても、やっぱりどこか影のある言葉だ。