ちょっと不遇な「賢者の贈りもの」。

1月28日の妻の誕生日。

妻の名はデラ。夫の名はジム。

その日はデラのお父さんの13回忌のため実家のあるジョージア州に長旅をすることになります。

ジムとデラは、帰ってからゆっくり2人で誕生日を祝おうと思っていました。

彼らの住むニューヨークはものすごく寒い年で、留守中に水道の凍結や観葉植物の被害を心配せねばなりませんでした。

13回忌は無事に済ませましたが、帰る途中で列車が雪のために3時間も立ち往生。

2人は疲れと寒さで風邪をひいてしまいました。

疲労困憊で家に戻ると、案の定、水道は凍結、植物も葉を黒く枯らしていました。

そこからが大変でした。

デラが寝込んでしまったのです。

ジムの献身的な看病と主治医のアンディ先生の妙薬のおかげで、10日たって何とかデラは回復しました。

ようやく誕生日ができる!

2人は舞い上がりました。

デラは思いました。

看病してくれた愛するジムに何かプレゼントをしよう!

でも、財布には1ドル87セントしかありません。何度数え直しても1ドル87セント。

これでは何も買えません。デラの目から涙が出てきました。

しかし、デラが姿見の前に立ちお化粧を直していたとき、素晴らしいことを思いつきました。

デラには膝の下まで届く美しい髪の毛があったのです。

すぐにその長い髪の毛は、デパ地下である品物に変っていました。

自分は食べられないけれどもジムが大好きな「牡蠣」でした。

いつも自分に遠慮して買わないことを気にしていたのです。

今日はたらふくジムに食べてもらおう!

そう思ったのです。

一方、ジムも愛する妻・デラのために何か素晴らしいプレゼントをと考えていました。

でもお金がありません。

ジョージアまでの旅費で貯金を使い果たしてしまったからです。

ジムは、義父から受け継いだ大切な金の懐中時計を質に入れることを決意しました。

そして、ジョイさんとジーナさんが経営するワイン屋さんに行き、とっておきの税込み3,000円のワインを買いました。

家に着いて扉を開いたジムは、デラの顔を見て棒立ちになってしまいました。

デラのあの美しい髪の毛が無くなっていたからです。

しかも、頭が寒くなったデラはまた風邪をぶり返してしまい、顔は赤く、目は充血し、青っ洟を垂らしていました。

せっかくの高価なワインも、鼻が詰まって味も香りも分からずじまい。

一方、ジムは大量の牡蠣を食べ過ぎて、すっかりおなかを壊してしまいました。

そんなわけで、せっかくの誕生日はちょっと不遇なことになりました。

でも、彼らはお互いの「思いやり」を受け取りました。

自分の一番大切にしていたものを犠牲にしてまで愛する者を喜ばせようとした、その「思いやりの心」を互いに受け取ったのです。

めでたしめでたし。

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