デジタル・トランスフォーメーション「DX」はデジタルによって世の中に変革を起こすことらしい。
トランスフォーメンション (Transformation) の頭文字は「T」なのに、なぜ「DX」なのか? 「DT」が本当ではないのか?
ところが、これには訳があって、Transは「交差」を表すから「X」という、字面的に交差した文字を当てたのだそうです。
なあんだ。
でも、どうなんだろう。
まあ、それが大事なんだろうということは分かる。
ウーバーイーツも分かるし、GAFAも分かるが、僕は今こそ、AXだと思う。
デジタルではなくアナログ。
アナログの「A」である。Analog Transformationである。
そうだ! それが「AX」だ。
アナログによって世の中に変革を起こすのだ。
それは具体的にどういうことか?
まず文通である。そして年賀状の復活である。
僕の周りでもどれだけ多くの人が、文通や年賀状をやめただろうか。
「筆を折る!」と宣言して、本当に無味乾燥な味気ないイージーな道を選んだことだろうか。
宣言するならまだいいが、黙って年賀状を寄越さなくなった人がどれだけいただろうか。薄情者ね!
ねえ、アナログに戻ろうよ!
そこから全てが始まる。心の砂漠をオアシスに変えよう。
あの郵便受けに手紙が入っていた時のわくわくする喜び、それを待っている間の高揚する気持ちを、ほら、しばらく忘れていませんか?
ユーミンの『青いエアメール』という歌を覚えていますか?
♪青いエアメールがポストに落ちたわ
雨が染みぬうちに急いで取りに行くわ
傘で頬を押さえ待ちきれず開くと
癖のある文字が切な過ぎて歩けない♪
ああ、ほんとに切ない。
そして音楽はレコードに針を落としてプレーヤーで聞こう。
あのプチプチは雑音ではない。薪をくべた時のパチパチと同じ、癒しの音響効果だ。すてきなSEだ。
LINEではなく手紙かFAXを使おう。急ぎの場合は電報か伝書鳩ですね。
「サクラサク」に込めた5文字のあの感動を呼び起こそう。
「サクラチル」に込めた5文字のあの絶望を共有しよう。
それから、会社は必ずクリスマスイブの日は社員にクリスマスケーキを贈ること。
別に高級なものでなくてもいい。生クリームケーキでなくて粗めのスポンジのバタークリームケーキでいいから、直径30センチ以上のもの(ここ大事)を白い水玉のビニール風呂敷にくるんで。このシチュエーションは大事です。
いつの頃からか、父の尊厳が失われたが、僕はこの習慣の廃止がどうもその原因ではないかと思う。
父はかつてクリスマスケーキを運んでくる意味において偉かったのだ。
それから、女子社員はバレの日におじさん社員に義理チョコを贈ろう。
もらったおやじ諸君はホワイトデーにしっかりクッキーを贈り返そう。
この習慣が円滑な会社運営に一役買っていたことは否めない。これさえやればハラスメントはなくなる。心が「晴らすめんと」だから。
それから営業日報は手書きにしよう。
それから完全週休2日制はやめて土曜日は半ドンにしよう。
半ドンの日は弁当を持参しよう。
そのおかずにはブリの照り焼きが望ましい。
それから、それから……
ここまで根気強く読んでくれた皆さん。ありがとう。
どうですか?
やっぱり「AX」のほうが健全な社会を建設すると思ったでしょう。
あの時代はそういう今は廃れてしまった美習慣があったのだ。
スマホの目覚ましで起きてるあなた!
だめだめ、これからはミッキーマウスの目覚まし時計ですよ。
おっきなベルがてっぺんに付いてて、それがけたたましく鳴るやつ。
「るっせえな!」と無意識に何度ぶったたいて壊したことか・・・
DXからAXへ。間違いなくその波が来ている。
ああ、すっきりした~!