歌えるんだけど、意味不明。
そういう歌の代表が、この『お富さん』ではないだろうか。
ボクは小学生の時分、これをかなり正確に歌えていた。
その時の頭の中のイメージはこうだった。
「いきな黒べえ、神輿の祭り、あだ名姿の洗い髪」
いきなり「黒べえ」さんが出てきて、祭りの神輿をかついでいる。。。
黒べえというのはあだ名である。。。本名は「黒之介」という。
祭りが終わって汗臭くなったので彼は髪を洗っている。。。
まあ、そんなことを題材にしているものとばかり思っていた。
しかし、これは違うんですね。
『与話情浮名横櫛』という歌舞伎のお話だったんですね。
そして、本当はこういう歌詞だった。
♪粋な黒塀 見越しの松に 婀娜(あだ)な姿の洗い髪♪
♪死んだはずだよ お富さん♪
♪生きていたとは お釈迦さまでも♪
♪知らぬ仏の お富さん♪
♪エーッサォー 玄冶店(げんやだな)♪
ボクのイメージはちっとも正確じゃなかったことが分かった。
黒べえさんではなく「黒塀」だった。
神輿の祭りではなく「見越しの松」だった。
いろいろ間違いまくっていた。
で、次の「婀娜(あだ)な」だが、これはネットで調べる限りほとんどこう書いてある。
「仇な」。。。
歌舞伎のお話的には、確かに与三郎にとってお富は「仇」な存在であるかもしれない。
でもやっぱり、この場合「婀娜(あだ)な」でなければいけない。
粋な黒塀ときて、見越した松に洗い髪とくりゃあ、ここはどうしても富さんには「婀娜(あだ)な」でいってもらいて~。
あだ【婀娜】〔「婀」も「娜」も美しい意〕
〔女性が〕性的魅力をからだ全体から発散する様子。「婀娜っぽい」(新明解国語辞典:第4版)
いいねえ、色っぽいねえ。発散してるねえ!
黒之介の「あだ名」のイメージとは大違いだねえ。
それにしても「言葉のチカラ」は恐ろしいねえ。こうも違うもんかねえ。
知らねえと恥かくねえ、まったく。